風が薙ぐ 其れはいつかの夕暮れの影 夕陽に向かい たなびく外套は深淵を辿る 風が鳴る 其れはいつかの墓標の痕 荒野を越えて 揺らめく明かりを探し往く 彼の人 見えているか 湿原に佇む灯火が 聞こえているか 枯草が擦れる哀歌が その昔 彼の人は草原を踏みながら云う 去れ されども行き着く先にはただ軛あるのみ と 風が抱く 今際に眠る慟哭の歌が 見えているか 聞こえているか 知っているか と 問う